DARK SOULS TRPG(ダークソウルTRPG) レビュー


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ダンジョン探索の緊張感、強敵との戦闘の恐怖……大人気のダークファンタジーRPG『DARK SOULS Ⅲ』がTRPGに登場したでござる!!

死んでステージを覚える死にゲーとして名高いDARK SOULSだけに、久々に緊張感あふれるTRPGが楽しめるのではないかと思い、ウキウキしながら早速遊んでみたでござる。

……ちなみに、拙者を含め当日参加したプレイヤーは誰一人として本家『DARK SOULS』をプレイしたことがないで悪しからず。

卍 原作ダークソウルの再現度は高い! 卍

原作を遊んだこと無いのに、こんなことを言うのも何でござるが、ルールや設定、シナリオ内容等から原作の再現度は極めて高いと感じたでござる。

キャラクターメイキングに始まり、戦闘やダンジョンを進んでいく緊張感、協力者PCである『白霊』の存在は間違いなく原作ファンも納得の出来でござる。

また、全体的な印象として、そのまま遊ぶのであればTRPG初心者向きだと感じたでござる。

キャラクターメイキング

まず、キャラクターの能力はダイスによって、ランダムで決定するでござる。

具体的には2D6+4を8回振り、生命力・集中力・筋力等の8つの能力値に割り振り、そのステータスを元に素性うを決定し、その後にスキルの習得を行うでござる。

……能力がランダムに決まるルールを久々に見たでござる。
また、能力値の合計から80を引いた値がレベルとなるため、他のTRPGに比べると1レベルの重みは軽めでござる。

習得するスキルは素性ごとに決められた初期スキルと初期レベル÷5個を追加で取得できるでござる。

この時に注意なのが、素性のサンプルキャラクターシートに記載があるが、本文内のスキルページに記載が無いスキルがあるので要注意でござる。

初期装備とアイテムは素性により決まるので、その辺を書き写して、その他の能力を計算すれば概ね完成でござる。

最後に、『思い出』を3つ決めて、名前と性別を記入すれば完成でござる。

この『思い出』は死ぬたびに失われ、全ての思い出を失うと心が折れてキャラクターが亡者になるという設定でござる。

……まぁ、TRPGで何度も死ねるというのも緊張感がなくなるので、適度な緊張感を与えるためのエッセンスでござる。

戦闘

ルールブックをざっくり読んで、今作品で一番楽しむ部分はこの戦闘であると即座に理解したでござる。

戦闘の進行や処理が特徴的であり、他のTRPGではあまりないパターンの処理が多いものの、それらがうまく原作の戦闘の緊迫感を表現しているでござる。

いくつか代表的だと感じたものを紹介するでござる。

●特殊その1 イニシアチブ

どのキャラクターが行動できるかを決定するイニシアチブフェイズ。

大抵のTRPGは、キャラクター固有の行動値(イニシアチブ値)などがあったり、ターンごとにイニシアチブ値を決定することが多い。

しかし今作のイニシアイブの決定は未行動のキャラクターが存在る限り、何度もイニシアチブ値を決めなおすのでござる。

さらにイニシアチブ値が同値だった場合には、互いに行動を牽制しあって動けない『イニシアチブバッティング』が発生し、イニシアチブの獲得権を失うのでござる。

このことにより、他のTRPG以上に行動順が入り乱れた乱戦状態が表現できていると思う次第でござる。

※ターン開始→全キャラクターでイニシアチブ値を決める→行動権を得たキャラクターのアクション→残りのキャラクターでイニシアチブを決めなおす→行動権を得たキャラクターの行動……。のように、キャラクターの行動が終わるごとにイニシアチブの振りなおしを繰り返し、全キャラクターが行動終了すると次のターンに移る。

●特殊その2 スタミナダイス

キャラクターが1ターンに起こせる行動はスタミナダイスによって制限されるでござる。

キャラクターは5つのスタミナダイスを持っており、アクション(攻撃等)もリアクション(防御)もこの中で行わなければならないのでござる。

例えばアクションで3個のダイスを使用した場合、リアクションには2つのダイスしか使用できないのでござる。

イニシアチブで行動権を得たキャラクターは所持しているスタミナダイスから、アクションに使用するダイスの個数を宣言して、ダイスを振り、アクションを実行するでござる。

リアクションの場合は、ガードか回避を選択後リアクションダイスを消費してリアクションを行うのでござる。

アクション、リアクションには様々なコストがあり、どちらにどれだけのダイスを費やすかが非常に悩みどころであり、死と隣合わせの駆け引きが実感できるでござる。

※アクションの一例
コスト:攻撃→ダイスの出目合計4以上、スキル→ゾロ目、アイテム→ダイス1個
「アクションダイスを3個振り出目が[3・4・4]だった場合」
・[4]を消費して攻撃
・[4]を消費して別の敵に攻撃
・[3]を消費してアイテム使用
または
・[4・4]を消費してスキル
・[3]を消費してアイテム使用
などのように、最初にダイスを振り、その後にコスト条件を満たす出目ダイスを消費してアクションを行う。
また、このタイミングで未使用だったアクションダイスはスタミナダイスには戻さず、使用されたものとして扱う。

※リアクションの一例
リアクションを行う場合は、回避かガードを選択後にリアクションダイスを1つ振る。
振ったダイスで回避やガードのコストに満たなかった場合、追加でリアクションダイスを振っても良い。

アクションが宣言してまとめて振るのに対して、リアクションは振り足していくことに注意でござる。

また、コストさえ支払えれば攻撃は成立するので(相手にガードなどされる可能性はござるが)気楽でござる。

●特殊その3 ダメージの算出

これに関しては、たまに存在するルールにはなるのでござるが、受けたダメージ量に応じてHPが段階的に減るものでござる。

HPが数値ではなく□マスの数で管理されており(ゼルダ伝説でリンクのHPがハートで表現されているのと同じ感じと言えば伝わるでござろうか?)、10~20ダメージなら■(□マス1個分のダメージ)21~30ダメージなら■■(□マス2個分のダメージ)のように受けたダメージに応じて□マスを黒く塗りつぶすのでござる。

ダメージが直接HPから引かれるわけでは無いので、直感的では無いが、ダメージ早見表なども用意されているため、ダメージ計算をスムーズに行うことが出来、戦闘テンポの良さに貢献している。

●特殊その4 幸運の存在

戦闘ルールに限定する内容ではござらぬが、今作品にはダイスの振り直しルールが存在するでござる。

ダイスの振り直し自体は取り立てて珍しいルールではござらぬが、DARK SOULS TRPGのダイス振り直しは汎用性の高さとリソースの豊富さが格別でござる。

キャラクターは運のステータスと同数の幸運を所持しており、この幸運を1つ消費するごとにダイスを一つ振りなおすことが可能なのでござる。

運のステータスと同じということは、初期キャラクターでも11前後(2D6(平均値7)+4)の幸運があり、最低11回は振り直しが使えるのでござる。

また、使用箇所の汎用性も高く、ほぼすべてのタイミングのダイスに適応可能なのでござる。

さらにさらに、イニシアチブバッティングが発生すると1点回復することができる……他のTRPGに比べても豊富すぎる使用回数なのでござる。

……まぁ、これが意味することはそれだけの振り直しが必要なほどシビアなゲームともいえるでござる。

判定の失敗=死亡のようなイメージで、死亡からの復活=幸運の消費という形で表現していると思えば、納得のリソース量でござる。

ホストPCとゲストPC

通常のTRPGであれば、キャラクターはみな同じ世界線上に存在し、互いに言葉を交わし、協力しながら物語を進めていくのでござるが、DARK SOULSにおけるメインプレイヤーは1人でござる。

それゆえに、ゲームを開始するにあたりメインプレイヤーであるホストPCを決定し、残りのプレイヤーはゲストPCである白霊としてホストPCをサポートしていく形になるのでござる。

もちろん白霊であっても死亡すれば思い出を失うことに変わりなく、プレイ中の緊張感は変わらない。

ただ、ゲーム内でホストPCが死亡した場合、白霊はすべて死亡したものとして扱われるので、白霊たちはホストPCの死亡には特に気を付けなければならないのでござる。

さらに、原作を再現するギミックとして白霊は基本的に言葉を話さず、ジェスチャーによってホストPCや他の白霊と意思疎通を行うのでござる。

実際にジェスチャーしにくい場合用にジェスチャーシートというものも用意されており、それを指さしてジャスチャーに代用しても良い。

……この辺のルールはとてもゲームらしい処理だと感じたでござる。

ダンジョン探索

シナリオはトランプを用いたランダムダンジョン方式で行われるでござる(この辺のルールに関してはデザイナーである加藤ヒロノリ氏がかつて作成した六門世界TRPGのサプリメント『迷宮都市メルラルズ』やグループSNEの代表作ソードワールド2.0のサプリメント『ミストキャッスル』『フェアリーガーデン』を彷彿させる。)。

トランプ1枚を1つのフィールドに見立ててテーブルに配置し、フィールドを移動するたびに該当するカードをめくってイベント処理をおこなうのでござる。

基本的な運用としては、フィールド概要と共にプレイヤーが行える行動を伝えるため、初心者であってもやるべきことがはっきりして遊びやすい。

ゲームブックみたいにも遊べるので、シナリオさえ用意しておけばGM無しのソロプレイも可能でござる。

卍 ここが惜しい!DARK SOULS TRPG 卍

あくまでTRPGフリークとしての意見であり、今作品が悪いという話ではござらぬ……という前提のもと、拙者達のグループが遊ぶにあたり、「ここがこうだったらもっと楽しめる」という内容を述べるでござる。

解釈やちょっとしたルール付で楽しめることもあるので、参考にしていただければ幸いでござる。

ダンジョンの進行をもっと自由に……

初心者には優しい仕様ではござるが、概要や行動指示がシステマチックすぎるので、もっと自由裁量の部分を増やしても良いと思うのでござる。

完全にGM裁量ではござるが、フィールド概要の読み上げは行うが、行動指示は開示せず、もっとプレイヤーが自由に探索でき、その行動に応じてアドリブ的な展開を加えるとよりTRPGとして楽しめるのではないかと思うでござる。

白霊の存在と会話

TRPGなのだから、もっとキャラクター同士の会話を楽しめたほうがマンネリ化しにくいと思うのでござる。

基本ルールに乗っ取ると、ボードゲームチックにすべてが進行してしまうので、もっとキャラクターに個性を持たせ、人間味のある白霊として遊べるとプレイの幅が広がり、長く遊べると思うのでござる。

装備とスキルが少ない…

キャラクターの装備がとにかく少ない……いや、武器は豊富にあるのでござるが、剣・槍・斧などのカテゴリー別に分けるとその数は少なく、防具に至っては素性ごとのシリーズが用意されているのみで、初期装備から変更する余地がほぼ存在しないのでござる。

もちろん高価な特殊装備や敵から入手する非売品装備などは存在するのでござるが、もっと武器防具を選択する楽しみがあっても良いのではないかと思う次第でござる。

現時点ではソウルの使い道がほとんどレベルアップにしか使用しないようなレベルなのがもったいないでござる。

また、スキルに関しても、各武器カテゴリーで使用できるスキルが1~2種類と少ないため、こちらももっと多くのスキルがあって、同じ武器を使っても別の方向性のキャラクターが作れるようになるとさらにうれしいでござる。

卍 総評 卍

原作を知っているならば原作の雰囲気を存分に味わえ、初心者でも遊びやすいルール構成。

よりTRPGとして遊びたい場合には、ダンジョン処理と白霊に関して多少ファジーに処理することで解決の目がある。

アイテムとスキルの少なさを解消するのは難しいでござるが、全体的には良作でござる。

昔懐かしいTRPGの雰囲気も感じられ、戦闘の緊迫感は他のTRPGと比較しても高いクオリティを保持しているでござる。

しっかりとしたつくりで、拙者としてもシナリオを用意しやすく長く遊びたいと思える良い作品でござった。



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