曇天に笑う 10代目風魔小太郎

卍双身の頭領 10代目風魔小太郎卍

唐々煙先生の漫画『曇天に笑う』は明治11年の滋賀を舞台にした作品でござる。
300年に一度現れて、人々に災厄をもたらす大蛇。その大蛇の依り代となる「大蛇の器」たる人間を求めて、様々な思惑が交差する物語。

この作品にも滅んだ忍びとして風魔が登場するでござる。

曰く、「昔名高い忍集団の里が三つあった。内一つ、”甲賀”は人につく。主君に忠義を尽くす仁忍。内一つ、”伊賀”は金につく。契約以上の関わりを持たない覇忍。内一つ、”風魔”は無忍。金にも家にもつかないきまぐれな影。ただ何を於いても目的は遂げる。」とのことでござる。

いやはや、自由な感じがあるのは良いでござるが、小田原北條氏お抱えの忍者としてはいささか不本意な設定にござるな……。

さて、この漫画に登場するのは10代目風魔小太郎でござる。
5代風魔小太郎が処刑されたと言われているのが1603年にござるから、およそ270年の間に5代の代替わりがあったというところでござるか。

卍曇天に笑うにおける風魔忍者卍

作中において、風魔には特殊な外見が設定されているのでござる。
それは、白い髪に紫の瞳……それも生まれついてのものではなく、風魔の最終試練として、狭く暗い箱の中に閉じ込められ、闇と恐怖に耐え、心を殺すことができた者のみがその姿に変じるとのことでござる。
試練の半ばで逃げ出した者は、変色が半ばで止まり、半端者として侮蔑の的となるのでござる。

ここからは、ネタバレを含む内容となってしまうのでござるが……
風魔一族は大蛇の眷属であり、大蛇復活のために一族を滅んだように見せかけ、政府に隠れて綿密な計画を練っていたのでござる。

そして、その鍵となったのが10代目風魔小太郎でござる。
10代目の風魔小太郎は双子の忍びで、2人で10代目の風魔小太郎を名乗っている。

彼らは大蛇を復活させるべく、一人は極悪な囚人たちがとらわれている監獄を中から支配し、反政府の軍をまとめ上げ、一人は「大蛇の器」に最も近い者たちの身辺に潜り込み、「器」の捜索と反政府の狼煙をあげる機を伺っていたのでござる。

かくして、彼らの計画は実を結び、大蛇の復活に成功するも、そこは世の常。
反大蛇を掲げる主人公たち一党により、大蛇は倒され、戦いに敗れた風魔小太郎は崖から身を投げ、行方知れずとなってしまったのでござる。

やはり、風魔一族が人類の敵の眷属として描かれ、悪者として扱われてしまったことは残念ではござるが……。
10代目風魔小太郎の片割れ、金城白子は強く、とても良いキャラクターであり、風魔としての使命を第一としながらも、心のどこかに後ろ暗さと淡い憧れが渦巻いている姿が印象的でござった。
私情はあれど、一族と目的のために己を殺すその姿は、さすが風魔の頭領というあっぱれな忍びっぷりでござった。


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