風魔忍法帖-風魔小太郎-

卍 忍びなれど武士 武士なれど忍び 卍

早乙女貢 先生が描く時代小説『風魔小太郎-風魔忍法帖-』。
風魔』と並び、数少ない風魔小太郎を主人公として描かれた作品でござる。

本作品における風魔小太郎は4代目風魔小太郎とされているが、その特徴や時代を考えるならば5代目風魔小太郎と同一人物とみて良いと考えるでござる。

北條早雲と出会いその人柄に惚れた初代風魔小太郎は、北條家が大藩へとのしあがる影の助けとなった。
早雲が伊豆・相模を手に入れた際に、小太郎に報いるべく、一国を与えようとしたが、小太郎はそれを固辞し末代までの忠誠を誓った。
以後、風魔は北條譜代の臣でありながらも、客分としての捨扶持に甘んじてきた。

そんな背景もあり、風魔忍法帖に登場する風魔小太郎は、常に『北條家あっての風魔』にこだわり、北條家への忠誠を貫き通す。
北條の譜代の臣としての誇り、忍びとしての誇り、大藩となり武門の名目や体面のため、忍びへ向けられる侮蔑へのやりきれなさ……。
風魔一族の頭領としての小太郎と、一武人としての小太郎の狭間で悩む姿はとても人間的でござる。

また、忍城が陥落しなかった背景には、風魔小太郎が救援に向かい光成の水攻めを妨害していたからという解釈は面白かったでござる。

他にも、
・向坂甚内、庄司甚内、鳶沢甚内の3甚内が兄弟として設定されている。
・北條家が一度は豊臣と和平を結んだ。
・風魔四天王、風魔十人衆なる存在が登場する。
・豊臣家とあまり敵対していない。
あたりは面白かったでござる。

特に風魔が豊臣家に対しはあまり深く敵対していないのは意外でござった。
反面、徳川への恨みは強かったでござる。
そして、最大の敵はなんと徳川についた北條家臣だったでござる!!

小田原合戦で豊臣に寝返ったものはもちろんのこと、戦後に徳川家へと鞍替えした者たちを次々と凶刃にかけてゆく。
曰く、主家北條から長きに渡る恩顧があるにも関わらず、主家が没落するや否や掌を返す卑劣漢を許すわけにゆかぬ。
……なかなかに手厳しい風魔一族の北條愛でござる。

北條の忍び風魔に強いこだわりを持ちすぎるが故に、多少頭が固い。
されど、どの作品の風魔小太郎よりも武士らしい風魔であり、「武士なれど忍び、忍びなれど武士」の風魔を強く描いているでござる。

また、本書のなかでも度々描かれる北條家と風魔の深いつながりこそが、他の伊賀・甲賀の忍びと風魔の大きな違いだと再認識させられるでござる。

余談ではござるが……作中かなりエロい描写が多いので要注意でござる。
やはり忍者の時代小説とエロは切り離せないのかも知れぬ……。